大問1 歴史(配点18点)

(1) 聖徳太子の政策

(1)は、推古天皇のもとで聖徳太子が行った政策についての問題です。
ちなみにですが、聖徳太子は推古天皇の甥です。

聖徳太子が行った主な政策は、下記の3つです。

  • 冠位十二階の制度を定めた。
  • 十七条の憲法を定めた。
  • 遣隋使を派遣した。

これ以外にも法隆寺を建設したことも聖徳太子が行ったこととして有名です。

天皇(大王)の命令に従うなど、役人の心構えを示した方は、十七条の憲法です。

十七条の憲法では、仏教や儒教の考え方を取り入れたという背景もあり、十七条の憲法が定められた時代より前のできごとは、シャカがインドで仏教を開いたことです。

(1) 解答

名称:十七条の憲法
記号:イ

(2) 墾田永年私財法の狙い

(2)は、墾田永年私財法と税収についての記述問題です。

まず、設問中の税の租・調・庸について確認しておきましょう。

  • 租:稲の収穫の3%を納めるもの
  • 調:絹や魚などの特産物を納めるもの
  • 庸:労役(兵役や土木工事など)の代わりに麻の布を8m納めるもの

また、墾田永年私財法は、新たな開墾地であればいつまでも自分のものにしてよいと認めた法です。

租は、稲の収穫の3%を納めるものであり、またこのころから鉄製の農具なども広まっていました。
反面、洪水やひでりといった自然災害と人口増加による口分田の不足という背景もあり、朝廷が新たな開墾地を増やす狙いがあったことが読み取れます。

租の課税対象が田地であることと墾田永年私財法の内容を踏まえてまとめましょう。

(2) 解答例

新たな開墾地を増やすことで、租が増えるから。

(3) 中尊寺金色堂と奥州藤原氏

(3)は、奥州藤原氏による東北地方統一についての穴埋め問題です。
設問の中尊寺金色堂の写真は表示できなかったので、参考リンクをこちらに共有します。

参考:中尊寺金色堂について

奥州藤原氏は、平泉に本拠地を置き、東北地方で権力をふるいました。
平泉には、各地から文物(文化の産物)がもたらされたり、都の文化なども積極的に取り入れられ、中尊寺も建設しました。

1189年に、源義経をかくまったことを口実に、源頼朝によって滅ぼされました。

中尊寺金色堂は、奥州藤原氏の代表的な建築物で、三代にわたって権力をふるった清衡、共衡、秀衡の遺体がいまでも安置されています。
中尊寺金色堂をヒントに、奥州藤原氏のことを連想して回答しましょう。

(3) 解答

記号:エ
a:源頼朝

(4) 織田信長の政策

(4)は、織田信長の政策についての記述問題です。
まずは、織田信長が行った政策とその狙いを押さえておきましょう。

  • 安土城を近江(滋賀県)に築いて、全国統一の拠点とした。
  • 関所を廃止して、自由な交通を可能にした。
  • 道路を広げて、商品の流通を盛んにした。
  • 座をなくして、市場での税を免除、商工業を活発化させた。

ちなみに、「座」とは、鎌倉時代・室町時代につくられた商工業者の同業者団体で、公家や寺社の保護を受けて、営業を独占する権利が認められていたもののことです。

設問の資料1の法令は、楽市令といい、楽市令で行った経済政策のことを楽市・楽座と呼びます。
「楽」という字には、規制が緩和された自由な状態という意味があり、織田信長によって行われたものが有名ですが、近江の六角氏や後北条氏、今川氏なども行っていました。

「座」の特権と楽市令の狙いを商工業の活性化を説明する文章でまとめて回答しましょう。

(4) 解答例

座の特権を廃止して、商工業を活発化させる狙い。

(5) 鎖国と対外政策

(5)は、江戸時代の鎖国と対外政策についての選択問題が2問です。

江戸幕府は、貿易を統制して、日本人の出入国を禁止しており、この政策は鎖国と呼ばれます。
鎖国と聞くと、全く外交をしていないような印象を受けますが、完全に鎖ていたわけではありません。

aは、朝鮮との外交や貿易を担っていた藩についてです。

江戸時代の外交の窓口と外交相手は、下記の4つです。

  • 長崎(長崎県):中国とオランダ
  • 対馬藩(長崎県):朝鮮
  • 薩摩藩(鹿児島県):中国や琉球王国
  • 松前藩(北海道):アイヌ人

したがって、朝鮮との外交や貿易を担ってきたのは、対馬藩です。

長崎の出島では、キリスト教を布教しない中国とオランダのみと貿易を行っていました。

中国からは生糸や絹織物、作用、薬種、オランダからはベンガル(インド)やトンキン(ベトナム)産の生糸や海外の情報を集めたオランダ風説書などを輸入していました。

日本からは、銀や銅、海産物などが輸出されていました。

bは、江戸幕府の対外政策で起きた事件についての問題です。

天保8年(1837)にアメリカ船のモリソン号が日本に通商を求めるために来航しましたが、幕府は「外国船打払い令」によって砲撃して退去させる「モリソン号事件」が発生しました。
幕府の強硬論に対し、渡辺崋山は『慎機論(しんきろん)』、高野長英は『戊戌夢物語(ぼじゅつゆめものがたり)』を執筆して、慎重論をとりました。
蘭学者として影響力がある崋山の存在を警戒していた幕府は、これを理由に崋山と長英を処罰しました。
この事件を、蛮社の獄(ばんしゃのごく)と呼びます。

したがって、渡辺崋山や高野長英が批判した幕府の対外政策は、異国船打払令を出して砲撃したことです。

ちなみに、選択肢アと選択肢イは、ペリーが来航してからの幕府の外交の流れなので、該当しません。
禁教令は、豊臣秀吉が出した法令であり、こちらも時代が違います。

(5) 解答

a:ウ
b:エ

(6) 大正デモクラシー

(6)は、大正から昭和にかけての日本の出来事についての問題が2問です。

aは、第一次世界大戦中から終戦後に起きた日本での出来事を古い順に並べる問題です。

第一次世界大戦中は、戦場とならなかった日本とアメリカが世界経済で力を伸ばしました。
日本では、戦争に必要とされる船舶や鉄鋼などを生産して、重工業が急成長、貿易収支が黒字になる好景気(大戦景気)となりました。

一方、第一次世界大戦中のロシアでは、ロシア革命が起きて、世界で初めてのソビエト中心の社会主義国が誕生しました。
資本主義諸国では、ロシア革命の影響によって国内での労働運動や植民地での民族独立運動が活発になり、それを理由にソビエト政府を敵視して、日本やアメリカがシベリアに出兵しました。
これをシベリア出兵と呼びます。

第一次世界大戦後は、ヨーロッパ諸国の経済が回復して輸出が減り、また関東大震災なども重なり、不景気を繰り返しました。
その影響から、人々が銀行に殺到して預金を引き出したため、銀行の休業や倒産が相次いでおきました。
これを金融恐慌と呼びます。

歴史のできごとの並べ替え問題は、年号を覚えるだけでは対応できない問題が多いです。
特に昭和以降は日本だけでなく、世界の動きにも注目する必要があります。
年号を覚えるよりも、その時代の流れをしっかりと理解して、どのような時代の動きがあったのかを中心に学んでいきましょう。

bは、普通選挙法と同じ年に制定された法律についての知識問題です。

男子普通選挙が実現した1925年に制定されたもう一つの法律は、治安維持法です。

治安維持法は、天皇を主権がある国の体制を整えようとした狙いがあり、私有財産制度の廃止を主張する社会主義(共産主義)に対して重い刑罰を科したり、社会運動全般の取り締まりにも利用されていました。

護憲運動や普通選挙運動の活発化、民本主義の思想の高まり、政党政治の実現など民主主義に基づく社会運動が盛んになったこの時代の風潮を大正デモクラシーと呼びます。
大正デモクラシーの動きは合わせて覚えておきましょう。

(6) 解答

a:ウ → ア → イ
b:治安維持法

(7) 世界恐慌中の工業生産

(7)は、世界恐慌中のソ連の鉄鋼生産量の推移の選択問題とそう考えた理由を答える記述問題です。
世界恐慌に対する各国の施策を把握して回答しましょう。

ソ連は、スターリンの独裁体制となり、社会主義政策の下で重工業を中心とした工業化と農業の集団化が進められました。
社会主義国のソ連は、世界恐慌の影響をほとんど受けることはなく、「五か年計画」と呼ばれる計画経済によって、国内生産を増強しました。

設問の表2を見ると、選択肢ウのみが鉄鋼生産量を減らすことなく、増やし続けていることが読み取れます。
したがって、ソ連はウになります。
計画経済によって世界恐慌の影響をほとんど受けなかったことを理由に、簡潔にまとめて回答しましょう。

ちなみに、市場経済のアメリカやドイツ、イギリスなどの欧米諸国は世界恐慌の影響を強く受けました。
ソ連の五か年計画と合わせて、自由経済各国でどのように対応したかも合わせて把握しておきましょう。

アメリカは、世界恐慌に対してニューディール政策をとりました。

  • 農産物や工業製品の生産量を制限して、価格を調整した。
  • ダム建設など公共事業を起こして労働者の賃金を引き上げた。

イギリスでは、ブロック経済が行われました。
ブロック経済は、本国と植民地、関係の深い国や地域との貿易を盛んにする政策で、それ以外の外国の商品には高い税をかけて締め出す施策です。
ブロック経済は、フランスやアメリカでも行われたため、世界で自由な貿易が行われなくなりました。

なお、設問にもあった市場経済と計画経済の違いは下記のとおりです。

  • 市場経済:私的所有権が認められていて、生産や消費の決定が個々の企業や消費者によって決定できる経済メカニズムのことです。
  • 計画経済:国家(政府)の計画が価格の資源配分機能を代替する経済システムのことです。つまり、政府が生産や消費の情報を掌握して、その情報に基づいて資源の適正な配分を決定することになります。

市場経済と計画経済のメリットとデメリットを比べてみます。

  • 市場経済のメリット:消費者が自由に買うものを選択できるため、企業同士の競争が起こり、商品の低価格化、サービスの充実、機能の改良などが行われます。
    消費者はさまざまな商品の中から自分の好みに合わせて商品を自由に選択することができ、この自由な消費活動は、企業の成長にも大きな役割を果たしています。
  • 市場経済のデメリット:市場において競争の敗れた企業は、倒産を余儀なくされ、失業者が出る可能性があります。その結果、貧富の差の拡大が生じます。
  • 計画経済のメリット:政府の指令計画に基づいて決められたものを決められたように作るため、無駄がなく、競争もありません。
    そのため格差は広がりにくく、また、大規模な経済崩壊が起こる可能性も低いです。
  • 計画経済のデメリット:競争がないため労働者の勤労意欲のが欠如して、資源配分上の非効率などが挙げられます。

(7) 解答例

記号:ウ
理由:ソ連は計画経済を採用しており、世界恐慌の影響をほとんど受けなかったから。

(8) 経済の民主化

(8)は、経済の民主化についての問題です。
終戦後、民主化が進められる中で、経済も民主化されていき、そのときに行われた政策についての記述問題です。

日本は、日清戦争で得た賠償金を基に、重工業を発展させていきます。
その中で、三井・三菱・住友・浅野・安田といった実業家が金融・運搬・貿易・鉱山などの様々な分野の企業を経営して、経済を支配するようになりました。
この三井・三菱・住友・浅野・安田を財閥と呼びます。
財閥の多くは、政府と強く結びつきながら発展していきます。

第一次世界大戦中の大戦景気の中では、三井・三菱・住友・浅野・安田などの財閥はさらに力を付けていきます。

戦後の民主化政策では、今まで日本産業や経済を独占してきた財閥が解体されました。

財閥は、日本の軍国主義の基盤とみなされた背景があり、持株会社の解体、財閥関係会社間の株式保有、役員兼任の禁止、企業の分散、財閥関係者の役員就任の制限などの一連の措置がとられました。

財閥解体について、その理由も含めて簡潔に記載しましょう。

(8) 解答例

経済の支配していた財閥を解体する改革。

大問1 総括

2024年度の社会の大問1は、例年通り年表に沿った歴史の問題でした。

いずれの問題も教科書に記載がある内容からの出題であり、歴史は基本的な知識対策の重要性を改めて感じる内容でした。

歴史の問題は、どこから出題されるか予想するのは難しいため、広い知識が求められます。
日々の積み上げと学校の授業復習を通して、日本の長い歴史について学んでおきましょう。

また、その時代での出来事やその流れについて問われる問題も多いように感じます。
その時代その時代でどのようなことが起きて、その後にどうなったか、といった歴史の出来事の繋がりに着目した学習を進めましょう。

歴史の知識問題対策として、一問一答のテキストを行う中学生さんも多いとは思いますが、それだけでは対応できない問題も多いです。
知識問題対策を進めつつ、その用語や語句の説明ができるまで理解して知識として定着させる学習が必要になります。

これからを担う中学生の皆さんは。未来のために歴史から学ぶことができることも多いと思います。
日本の歴史には、今まで日本人がどのように災難や困難を乗り越えてきたかといった知恵と経験が詰まっています。

世界的に見ても長い歴史を持つ日本の歴史だからこそ学び取れるもの多いと思います。
受験対策を通じて、そいった知識を身に付けるためにも歴史の勉強を頑張っていきましょう。

大問2:日本地理 →

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